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不動産を相続するとき、相続税はいくらかかるの?手続きや計算方法、その対策を伝授

2020年09月16日

不動産相続税の計算方法や、相続登記手続きについて詳しく解説します。相続財産の総額や相続税額を大まかに把握しておくことで、相続開始前にいち早く相続税対策を始めることができ税金を大幅に削減することも可能ですまたね相続税の発生するような大きな遺産相続の場合は、税理士に手続きを依頼したほうが安心です。概要を理解して将来の相続に備えましょう。

 

■不動産を相続しても9割以上の人は税金がかからない 

不動産は大きな資産なので、相続すると必ず税金がかかるというイメージがありますが、実際は、統計上9割以上の人が相続の際、相続税が発生しません。一定額以上の財産を相続した場合にのみ税金がかかります。土地や建物などの資産が多い方が被相続人(※亡くなった際に相続財産を分け与える人)となる場合、「相続税がかかるのか」「発生するとしたらどのくらいかかるのか」を知っておきたいですよね。 

そのためには、まずは相続対象となる資産状況を大まかにでも把握しておきましょう。相続税の計算の際は、不動産だけではなく、現金や預貯金など資産全体の金額がわからないと相続税がかかるかどうか判断できません。 

相続税については、被相続人となる方がまだ元気なうちに、大まかに把握しておくことをおすすめします。そうすることで、いざ亡くなられたときに、相続人となる方々が慌てずに対処することができます。また、相続税の発生が見込まれる場合、生前から相続税対策を行っておくことで、相続人が財産をより多く引き継ぐことができます。 

 

相続税の基礎控除額を計算すれば相続税の有無がわかる 

被相続人の持っているすべての相続財産を足した金額が、「基礎控除額」を超える場合にのみ、相続税が発生します。基礎控除額は簡単に計算することができます。 

「基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の数 

例えば、相続人の数が4人の場合、3,000万円+600万円×45,400万円」が基礎控除額となり、相続財産の総額が5,400万円を下回る場合は、相続税は発生しません。統計上、日本人の9割以上が、この基礎控除額を下回る額しか資産を持っていないので、ほとんどのケースで相続税が発生しないことになります。 

仮に、相続財産の総額が1億円だった場合は、1億円から基礎控除額である5,400万円をさしひいた、4,600万円について相続税が発生します。 

この計算で出た基礎控除額をみて、明らかに資産総額のほうが多いと思われる場合は、相続税の具体的な計算、および不動産の相続税額を概算してみましょう。

 

■相続財産の計算方法 

相続対象となる財産の計算は、以下の方法で概算を算出することが可能です。 

・現金、預貯金

預貯金の計算は簡単です。5,000万円の貯金があれば5,000万円の資産として評価されます。

・負債 

借金やローンなどのマイナスの財産は、相続対象となるプラスの財産から差し引きます。 

・土地、建物 

他方、不動産の場合は5,000万円の土地を相続しても5,000万円の財産として評価されるわけではありません。土地に関しては「路線価」ないしは「倍率方式」で計算された金額の8割程度、建物に関しては、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に書いてある「固定資産税評価額」の金額が不動産の相続税評価額となります。 

このうち、土地の相続税評価額に関しては、固定資産評価額を1.14することによってもおおよその価格を割り出すことができます。


【財産の相続税評価額の考え方・まとめ 

・現金、預貯金など=額面通り 

・土地=固定資産評価額1.14 

・建物=固定資産評価額 


なお、ここでご紹介している計算式は、あくまで目安の金額を割り出す方法であって、正確な金額を知りたいのであれば税理士に依頼して計算してもらうほうが安全です。また、不動産以外の財産で、株式やゴルフ会員権、著作権など、価値が明確でない財産についても、素人に簡単に算出できるものではないので、専門家に依頼されることをお勧めします。

 

■肝心の相続税はいくらかかるの? 

相続税は、財産を相続した相続人一人一人に対して、それぞれの受け取った割合について発生します。基礎控除額、および相続財産の総額が判明したら、次はいよいよ相続税を算出してみましょう。

国税庁 No.4155 相続税の税率より(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm) 

 

・相続人が一人で、一億円を相続した場合 

相続一人なので、基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の数(1)」となり、基礎控除額は3,600万円となります。

次に、相続財産の総額である1億円から基礎控除額の3,600万円をさしひくと、6,400万円が相続税の課税対象となります。 

速算表に従い、「一億円以下の税率」で計算します。6,400万円に30%をかけ、控除額の700万円を差し引いた1,220万円が相続税額となります。 

このように、相続人が一人の場合は比較的単純な計算ですが、相続人が複数の場合はもう少し複雑になります。

・相続人が配偶者1人、子供2人で、一億円を法定相続分で相続した場合

相続3人なので、基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の数(3)」となり、基礎控除額は4,800万円となります。 

次に、相続財産総額1億円から基礎控除額の4,800万円を差し引くと、5,200万円が相続税の課税対象なります。 

次に、相続人に遺産を分配します。分配割合は遺言によって変更することができますが、特に何もない場合は、「法定相続分」と言って、法律で定められた配分で遺産を分けあうことになります。配偶者の相続分は遺産の2分の1です。子供が二人いる場合は、4分の1ずつ分け合うことになります。 

 


【相続する財産の割合 

・配偶者…1億円×2分の1=5,000万円 

・子A…1億円×4分の1=2,500万円 

・子B…1億円×4分の1=2,500万円 


では、このうちいくらについて相続税の課税対象となり、最終的にいくら相続税を課せられるのか、計算してみましう。先程、1億円のうち5,200万円が課税対象となると判明したので、法定相続分通りに振り分けてみます。 

 


課税対象となる財産の割合 

・配偶者…5,200万円×2分の1=2,600万円 

・子A…5,200万円×4分の1=1,300万円 

・子B…5,200万円×4分の1=1,300万円 


速算表に従い、「3,000万円以下の税率」で計算します。 

 


相続税額 

・配偶者…2,600万円×15%-50万円=340万円(※) 

・子A…1,300万円×15%-50万円=145万円 

・子B…1,300万円×4分の1=145万円 


※しかし、配偶者については、取得した遺産額が1億6,000万円に満たない場合には1億6,000万円までの分につき、相続税が免除されます。このため、実際には子A・Bそれぞれの145万円、合計290万円が相続税の総額となります。

 

以上のように、相続人の属性や数によって、相続税の額は変わってきます。検索エンジンで「相続税 計算 シュレーション」と検索すると、自動で相続税額を計算してくれるサイトが複数ヒットします。およその相続税額や相続人の人数、属性などを入力するだけで相続税額を算出してくれるので、気軽に利用してみましょう。 

 

■相続税が発生する場合、相続税の計算・申告は税理士に依頼しよう 

相続税が発生するような大きな遺産を相続する場合は、すべて預貯金であるなどの例外を除き、税理士に依頼することをお勧めします。 

 

相続税の申告自体は税理士への依頼が必須ではなく、個人であっても可能です。しかし、税のプロではない個人が計算や申告を行った場合、税務署に間違っている可能性が高いと思われ、チェックが厳しくなりがちです。 

また、身内が亡くなって精神的・肉体的に疲弊している中で、仕事の合間に行うには、相続税に関する手続きは労力やコストかかります。税理士なら、控除や特例をうまく利用して相続税を抑える知識も備えています。苦労して自分で申告を行うよりも、税理士に頼んだほうが割安になケースが多いのです。 

ただし、税理士に依頼する際は相続に関し実績がある専門家を選ぶとよいでしょう。一口に税理士といっても、税法には様々な分野があり、得手不得手があります。相続税に詳しくない税理士に依頼してしまうと、控除や特例などを利用した税金削減ができないことがあります。税理士の資格を持っていても、その専門知識のレベルは様々なので、口コミなどで評判の良い税理士を探すとよいでしょう。 

 

不動産相続の際、登記名義変更はしなくてもよい 

不動産相続の際、登記名義の変更は法律上の義務ではなく、期限も定められていません。しかし、登記名義をそのままにしておくと様々なデメリットやリスクが発生しますので、早めに名義変更手続きをしておくことを強くお勧めします。 

 

亡くなった人の名義で登記されている不動産を、相続人の名前に書き換える手続きを相続登記といいます。一般的には司法書士に依頼して登記手続きを代行してもらいます。登記名義の変更には、以下のような書類が必要になります。 

 


【相続登記の際必要な書類】 

(1)不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 

(2)被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの) 

(3)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本 

(4)相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書 

(5)遺産分割協議書 

(6)不動産を取得する相続人の住民票 

(7)不動産の固定資産評価証明書 


必要書類さえ揃えることができれば、手続きそのものは比較的簡単です。関係者が少なく、シンプルな相続であれば、司法書士に頼らずに自分で登記を行うことも可能です 

 

しかし相続人が多いと、相続人全員分の戸籍謄本や印鑑証明書を取り寄せる手間がかかります。また、亡くなった人が各地を転々としていた場合なども被相続人の出生時から死亡時まですべての戸籍謄本を取り寄せなくてはならないので、調査と取り寄せ手続きが膨大になります。そのため、費用が掛かってもプロに任せたほうが安心です。

 

■登記名義を放置するデメリットやリスク

(1)売却や抵当権設定ができない 

登記が被相続人名義のままでは、その不動産を売却することができず、不動産に抵当権を設定して金融機関などから融資を受けることもできません。 

(2)時間がたつほど相続登記は困難になる 

先述したように、登記手続きには「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」や「相続人全員分の戸籍謄本、印鑑証明書が必要になります。これらの書類は相続開始の時から時間が経てば経つほど入手するのが大変になってきます。相続人のうち一人が亡くなった場合は、その故人の相続人に協力してもらう必要があるなど、関係者はどんどん増え、調査は困難になっていきます。 

以上のように、登記名義を故人のままにしておいてもよいことはありません。幸い、期限のない手続きので、他の葬儀関係の手続きや相続税申告などを済ませた後からでも相続登記を行うことができます。人心地ついたらさっそく名義変更を行いましょう。

 

土地の高すぎる相続税を抑える対策 

相続税計算を行った結果、あまりにも高いと感じた場合には、生前から土地の上にアパートやマンションを建てるなどの相続税対策を行うことで、ケースによっては何千万円もの大幅な節税をすることができます。 

・不動産購入、アパート建築による節税効果 

元々、1億円の財産をすべて現金で持っているよりも、その現金で土地を購入しておくほう 

が相続税は安くなります。なぜなら、相続税の計算の際は、実際に売買された額(実勢価格)の7~80%程度の値段となる「路線価」の価格が評価基準となるからです。1億円で購入した土地は7~8,000万円の財産として評価されることになります。 

また、土地の上に建物を建てると、建物の価格は最大で時価の半額程度で評価されることがあるので、建物を建築したほうが相続税を抑えられます。 

加えて、この建物がアパートやマンションだった場合、第三者に貸し出す賃貸物件という扱いになり、評価額がらに30%減少します。この借地権の減額割合のことを借地権割合といいます。 

また、相続対象の土地に住宅用建物が建っていて、そこに亡くなった人と一緒に住んでいた場合「小規模宅地の特例」という減税制度があり、土地の評価額を最大80%まで減額することができます。賃貸アパートなどの「貸付事業用宅地」は上限200㎡、減額率は50%までですが、特に土地の価格が高いエリアでは非常に高い節税効果が得られ、また入居者からの賃料収入も期待できます。 

相続までの期間が長いほど多くの節税対策を行うことができますので、将来を見据えて早めに手を打っておくことをお勧めします。 

 

監修者 : 株式会社アルド 代表取締役 山本貴之 

宅地建物取引主任者 不動産経営管理士 投資不動産取引士 1級葬祭ディレクターFP技能士など数多くの資格を取得。 

不動産業として投資用物件及び、賃貸物件の取り扱いとご遺族をサポートする遺族支援事業を展開しています。 通常の業務でアパート経営を初めて取り組む方にも、細かくアドバイスしております。